「逃げる」
小原あき

「逃げる」を見つめてました


ある時は空腹から逃げました
耐えきれずに食べてしまったのです
あんパンは美味しかった
すぐに食べられることの幸せで
逃げていたことを気づかないふりをしました


ある時は暗闇から逃げました
耐えきれずに眠ってしまったのです
夢の中は心地良かったり
心地悪かったりといろいろあったので
逃げていたことを気づかないふりをしました


ある時は静けさから逃げました
耐えきれずに歌い出したのです
誰もいないことを良いことに
好きな歌を好きなだけ歌えたので
逃げていたことを気づかないふりをしました


ある時は現実から逃げました
耐えきれずに物語を書いたのです
だけど、誰も読む人はいなく
むなしくて泣いていたので
逃げていたことを気づかないふりをしました


ある時は怒りから逃げました
耐えきれずに捨てたのです
一からやり直そうと
心が軽くなったので
逃げていたことを気づかないふりをしました


ある時は逃げることから逃げました
耐えきれずに立ち止まったのです
「逃げる」を見つめていたら
身体の中心のかさぶたが剥がれたので
逃げていたことを気づかないふりをしました


青い空を見上げていると
大好きなはずなのに
たまに逃げ出したくなります






自由詩 「逃げる」 Copyright 小原あき 2008-09-30 19:19:44縦
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