胸の前で祈るように携帯を
たりぽん(大理 奔)

今夜の月は
半分しかないのに
風力発電の三枚羽根に
砕かれている
居場所がなくて
ぐるぐると、さまようものも
照らし出されれば美しいのだろう
今日も祈っている

風車越しに月を掴もうとすれば
手首は落ちるだろう
その時、染まるのは
羽根だろうか、月だろうか
僕の服だろうか

こんな日は太鼓の音が聞きたい
大きな和太鼓の
ゆっくりとした激しさで
ふるえたい、おびえたい

今夜、照らされることもなく
居場所もなく、ぐるぐるとさまよい
携帯電話を両手に小さく震えている
液晶の篝火はとても小さくて
口元だけをちいさく
とても紅く照らすだけで

今日も祈っている



自由詩 胸の前で祈るように携帯を Copyright たりぽん(大理 奔) 2008-09-27 23:39:38縦
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