その空へ
銀猫

裸足で海を確かめた後、
砂混じりに泡立つ波が残す
束の間の羊膜は
秋の曖昧な陽射しと融合して
反転の空を
この地表に造り、
(黒く濡れた浜辺は秘密裏に水鏡)
空を歩く、という我儘を赦してくれるのだ。
到底届かぬ空の中へ
爪先を
靴擦れの残る踵を
そろり、
そろり、
侵すように
揺るがぬように。
日常の螺旋は届かないのだ、
わたしが一本の髪さえ落とさなければ。
時間は止まり
ただ空の懐に吸い込まれるばかり
そういう開放を
或いは
実体を捨てた純粋な魂を
飲み込んでくれるところなど
滅多にあるものではない
九月、
ああ九月なのだ
わたしには夏に戻る術などないから
安心して飲み込んで欲しい
足跡はつかない、つけない、
空を歩く。
満ちて、
そして。






自由詩 その空へ Copyright 銀猫 2008-09-26 23:53:01縦
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