グランツ
嘉村奈緒

もう、ずっと、葬列のターンだ
山裾から行儀よく
山頂までの道のりを進む
お前たちの名前は
アダルベロ
だったり
クロデガンク
だったり
ジグラム
だったりする
高貴な熊や
有名な健脚や
勝利のからすであるお前たちは
羊を捧げたり
地に伏したり
衣を纏ったりと
てんでばらばらに悲しみに明け暮れるので
次から次へと葬列が伝染していくのだ
もう何度確かめたかわからない
白くて長い列の中に
ハインリヒだけがいなくて
てんでばらばらなくせに
ずっとハインリヒ、
って口にするものだから
きっとハインリヒの葬列は
山頂があるのかどうかもおぼつかないんだよ
愛されハインリヒは
絶対光華だから
憧れられてやまない木棺と
スパークした櫓
荘厳な鐘の音

永遠にさようならだねハインリヒ
それからくるくると
光が山頂のようなところから落ちてきて
お前たちをメッタメタに包む
高貴な狼も
冬の巨人の息子も
兜の管理者も
ハインリヒ、って
包む
安心して列に並ぶ

ご覧
あれが目指す山頂
のような山頂
もうずっと白くて
時々列の合間に揺れるものがある
眩しくて、焦がれる
光の




 


自由詩 グランツ Copyright 嘉村奈緒 2008-09-24 19:51:31
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