海蛍 (二)
銀猫

渚のざわめきは
ナトリウム灯のオレンジに溶けて消え
九月の海が
わたしの名を呼んだ

絹を広げたように
滑らかな水面が
夜の底へと続くしろい道を見せる

爪先からそっと水を侵すと
ひと足ごとに
身体は海蛍となって溶け始め
青白い光を放つかも知れない

  (黄泉への入り口を見つけたがごとく)

散らばった、
わたしだった形は
さざ波に翻弄されながら打ち寄せ
或いは
月に向かって跳ねる、
銀のさかなを縁取ったりする

いのちの欠片を
青白く光らせては消え
静寂の在りかを求め
朽ちた実感も無く尽きてゆく


些細な刺激は
凪のなかにもあって
わたしの指を仄かに光らせる

鼓動が遠くに退いてゆく






自由詩 海蛍 (二) Copyright 銀猫 2008-09-09 10:26:32
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