今朝早く君は物憂げにぼくのベッドから流離する
山田せばすちゃん

白いシーツにくるまって
裸の足を少しのぞかせながら
「帰るところがないのぉ」って
まるでローティーンの家出少女みたいな
口調でさ
そう言ってみな

きみの横に滑りこんだぼくは
不器用にきみの肩を抱きしめながら
「帰るって言うのはどう言う意味なのだろう・・」って
まるでものわかりのよくない詩人みたいな
口調でさ
訊きかえしてあげるから

そうしてぼくの隣で朝まで眠ればいい
きみは可愛いハタチの娘で
ぼくの友達で

悪い夢を見てうなされている
ぼくのことなんかほったらかして
「ありがとう、もう行くねぇ」って
まるで夕べのことなんかなかったみたいな
口調でさ
そう言ってみな

きみの細い手首を掴んで
日向みたいな匂いのする髪に顔をうずめながら
「今夜はどこのベッドで眠る予定ですか?」って
まるできみのスケジュールを管理するマネージャーみたいな
口調でさ
訊きかえしてあげるから

なにも答えずにベッドから抜け出せばいい
手を振り払って
出ていけばそれでいいよ

枕をきみの代わりに抱きしめながら
ぼくはもう一度眠るから
きみに話しかける
そのつもりで

          ぼくのともだちは
          行くところがいっぱいあって
          帰るところがない
          こんなに朝早くにぼくのベッドを抜け出して
          今夜はまたどこかよその男のベッドへと流離する

そう
きみは流離する
死ぬまで
死んでも



自由詩 今朝早く君は物憂げにぼくのベッドから流離する Copyright 山田せばすちゃん 2004-07-26 12:25:35
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