ゲリラなひと
恋月 ぴの

湯船に浸かり
うつらうつらしていたら
突然誰かが部屋に入ってきた気配を感じ
バスタオル胸元に巻いて飛び出すと

消したはずのルームライトに薫る
わたしの大好きな秋桜のアレンジメントに
添えられたメッセージカード

今夜は来ないって言ってたのにね

立ったままで解読してみる
ヒッタイトの象形文字にも似た金釘文字

キ・ミ・ノ・ヒ・ト・ミ・ニ・カ・ン・パ・イ

ついでにって感じで
アイシテル!

「総ては突然はじまり
突然終わる
そしてそれらはチェ・ゲバラのゲリラ戦のように
巧妙に仕組まれているのだ」

あのひとがそんなこと言っていたの思い出した
確かに突然かかってくる電話だって
かける方にはそれなりの動機とかある訳だし

レースのカーテン越しに遠雷とどろくと
鉛色の雲の動き忙しくて
突然降りはじめた雨音はアスファルトに弾け飛ぶ

こんな突然さえも仕組まれているのかな
だとしたら誰が仕組んだのだろう

あのひとの部屋に飾ってある
ウォーホルのチェ・ゲバラ
未来を射抜くまでに眼光鋭くて
巡りゆく存在のあり方に思いはせてみた




自由詩 ゲリラなひと Copyright 恋月 ぴの 2008-09-05 21:27:03縦
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