語群探知機
紫音

消費のエスカレーションが混沌とする夜
言葉もまた例外ではなく
鋳型で生産され無闇に消費され
資本主義万歳 であるような夜
漁火を灯し 沖合いへ
地図もなくあても無く探す
群れ集まる言葉を捜して

やがて消費し尽くしてしまうとしても
豊穣な言葉の海から
傷つけないようにやさしく 力強く
群れを誘い込み 引き上げる
烏賊のように釣り上げる
または異化した
それとも易化した
はたまたイカした言葉を吊り上げる

誘蛾灯に集まるように群れていく
「あ」
「い」
「う」
「え」「お」
愛餓え男?
ちょっと寂しい
売れてしまわず 蒸れてしまう  言葉
うっかり蒸し加減を間違えると
無視されてしまう
消費者は厳しい
虫であれば 黙殺されてしまうことも
ああ無情 諸行無常
夜の海は霧が降る
言葉は変化し流動化する

確かなものの一つとしてない海原で
手ずから灯りを掲げ
海図の無い航海へ
宝などどこにも無い
息をするように
手探りで 言葉を探す
それが消尽してしまうとしても
群れ集う「それ」に溺れて

釣られる言葉はオリジナルなどなく
複製と加工の産物として送り出される
買われるために 売られるために 捨てられるために
言葉の複製
刻まれるDNA 傷だらけのDNA 複製のエラー
変異することで生まれる創造
または偏移して表情を変える連なり

  見つからない語群の反射波
  それを探す旅
  深呼吸で肺を満たすように
  胸いっぱいの言葉を
  それともお腹いっぱいの言葉を
  語群を見つけ
  言葉をゴックン

哀しいかな
詩はお腹を満たしてくれない


自由詩 語群探知機 Copyright 紫音 2008-09-02 12:14:24
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