乾いたひと
恋月 ぴの

永遠に交わらぬはずの者同士が
交わろうとする



水と油
そんな感じで



高温にまで熱せられた油は
邪険にも寄せる思いを弾き飛ばして
ふつふつと
行き場の無い怒りに震えている



誰が悪いって?




わたしなの?



満たされることの無い乾き

苦しくなるほどに抱きしめあって
求め合って
あなたの息遣いを奥深く受け入れたはずなのに
わたしの身体は乾いている



乾ききってしまっている



あなたに殴られた頬の痛み
殴っても
殴られても
何かを満たすことなんてありえないのに

あなたの固い拳と
わたしの腫れあがった左頬



神田川に
幸せだったあの頃を捜し求めてみた



面影橋から望む黒い流れは
あまりにもそっけなく

見られまいと頬を隠した袖口の解れに
涙まで失ってしまったことを知る











自由詩 乾いたひと Copyright 恋月 ぴの 2008-08-22 20:25:42縦
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