迎え火
佐々木妖精

電気コンロを見つめ
一夜限りの放火魔が
燃えるものを片手に
ライターをふらつかせる

背丈より高くはためく炎
身投げするクスサン
手繰り寄せられそうな
上気した青年の手つきと
恐る恐る駆け回る子供の光沢
苦笑いを浮かべる老人の声
大きくなったらなと
引き継いだ任務を
遠方でひとり
もくもくと想像する
あの日に帰りたいとか
血迷わないよう
のろしなど上げ
この世のものに無事を知らせ
あの世のものを引き止め
共に眠るために
戻ってどうなる?
廃村でも燃やし
麦飯にありつくのか?
切符を抱く少年に語りかける
まあ スイカでも食おう
まるまるいっこひとりじめ
ここは二十四時間
スイカが買える土地
生まれ育ったものと
失ったもので作り上げた街


自由詩 迎え火 Copyright 佐々木妖精 2008-08-21 08:48:49
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