三連目
佐々木妖精

カレンダーに埋まった部屋を捨て
ベランダの柵に腰掛け
昨日から漏れてくる声と対話する
ずいぶん意見の合うやつだ
好きな食い物が一緒だし
口癖もどうせだし
財布の中身もよく似てる
大抵俺の方が少ないのは気になるが

従順な脚が風に飛ばされ
空のはずのペットボトルに引っかかる
ムジナが中で息を殺している
黒眼しかないつぶらなうつろ
拾う手は空を切り
黒いアクエリアスは転がって
8階から身を投げる
逃げ場を失い
人臭さが身につくのを恐れたのだろうか
獣の考えることは分からない
それとも やつも俺と同じなのだろうか
○にたい
だらしのない生き方
砂時計のように時を告げる通帳
この手を放して
空にもたれかかったら
家族や彼女の中
飛びこめるだろうか
早世したずるいやつらを
なじりにいけるだろうか
あるいは草木に吸収され
全ての生命が滅びるまで
残り続けるのだろうか
この獣は始末に負えない
何せ死ぬことにすら
希望を見出してしまうのだから
指先を柵と同化させる

死にたい
優れた詩のように
誰もが認めるような
矛盾なき飛躍を終連で放ち
正面から満足して


自由詩 三連目 Copyright 佐々木妖精 2008-08-15 00:04:36縦
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