空中
佐々木妖精

動物園でしか見たことのない獣の前で
動物園でしか見たことのない夢を見ていた
あれがニンゲンのコドモだと
舌うちされたのを覚えている
そうあれは
舌のある獣だった

消費した肩で
かつて鶏卵をかき回したことがある
羽化する前の獣を
口に運んだことがある
動物園でしか見たことのない人と
指のない産毛に突っつかれ
見ろニンゲンのオトナとか
あれはそこそこロクデナシと
格子のない檻の中
体育座りで身を縛る

好きだった
報われない願いが
整頓された茂みが蠢き
ドードーが顔を出さないか
待ち構えるのが
舌を出す獣の気配に
走らせた両腕が空を切る
抵抗を切り裂き
鋭角に去りゆく鳥よ
お前の翼のように
膝が思うまま動くのを感じる

ぶら下がる檻の中で見た夢
屋根を探る両脚
振り向くとニンゲンの大人は
鏡の中にいて
人の惑星ダイジェストを
小刻みに震わせる


自由詩 空中 Copyright 佐々木妖精 2008-08-13 09:03:37縦
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