捻くるひと
恋月 ぴの

人間すなおじゃないとね


あのひとは言った

あなただって…


言い返そうとして

としはまだ蝉の鳴き声を聞いていないことに気付いた

あのガード下へ行けば
聞く
ことできるのかな

薄暗くて罅割れた壁面から地下水
滴り
落ちてぽとり
ぼとり


そんな湿った気配のなかで

ナイテイル

蝉ってさ未通女の危うい恋心

好きなのさ

ガード下を抜けたところで

ひとりのおじさんが缶を潰していた

あちこちから拾い集めてきた空き缶を

しがし叩いていた

人生って

度は誰でもぺちゃんこになるんだよ

だとしたら
ひんやりとした棺のなかで悲嘆と献花に埋もれて

たい気がして

夏の陽射しは眩しすぎると

ナイテイタ



自由詩 捻くるひと Copyright 恋月 ぴの 2008-08-12 11:03:31
notebook Home 戻る