朝のたべもの
佐々宝砂

新聞屋が朝刊を持ってきたけれど
鳥がやってこない
鳥がおりてこない
待っているのに

たま呼ばいのやりかたがわからない
どううたったらいいのかわからない
岸の向こうには駅があって
どおどおとうなりをあげて始電がとまる
わたしの家にはなにもとまらない
鳥はとまらない

川辺ではきっと
もう鳥たちがめざめて
朝のたべものをついばんでいる
それは亀の死体だったり
さっきまで泳いでいたハヤだったり
寒さにふるえるみみずだったりするのだろう

すっかり冷めた牛乳の表面に
うっすらと膜がはっている

どうか朝のたべものをください
この家に鳥はやってきません


自由詩 朝のたべもの Copyright 佐々宝砂 2008-08-10 00:21:29
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