働くひと
恋月 ぴの
今日も一日誰とも話さずに終わってしまう
仕事柄何十本もの電話をこなし
お昼には職場の友だちとランチなんかしたけど
それで誰かと話したってことにはならない
パソコンの電源落として
机のまわりとか整理整頓して
タイムカードには定時退社の時刻が並ぶ
わたしがこの会社に入ったときには
すでに制服は無くなっていた
無い方が良いってひともいたりするけど
おしゃれな制服って憧れるし
オンオフの切り替えできないままに
漫然と一日を過ごしてしまうような気がする
そう言えば職業婦人なんてことばあったよね
らいてうさんの新婦人協会とかのにおいがすることば
新しい女のあり方を模索したとかで
何だか進歩的な雰囲気あるけど
どうもぴんと来なくて
女の自立って制服のある無しよりも大切なのかな
らいてうさん達の活動があってこそ
わたし達の今がある
そう思ってみたい気もするけど
あちこちのビルから出てくる
ひとの流れに逆らうことなんか出来なくて
ビッグイシューをかかげる帽子のおじさんの脇をすり抜け
東京駅丸の内北口への交差点を渡った