「削る」
ルナク

もうだいぶ短くなった青鉛筆を
今日も必死に削っている
先を細く細く尖らせなければ
気がすまないんだ
そのくせ
極度の尖端恐怖症なものだから
どれほど尖っているのか
目で見て確かめることもできやしない
人差し指の平に
すこし押し付けて
その痛みで判断をする
今日は下手をすれば指に突き刺さるほど
細く尖らせることができた
とても満足したので
何も描かずに筆箱にしまう
街で急に思い立つといけないから
スケッチブックと筆箱は
常に持ち歩いている
持ち歩いているうちに
鉛筆の先端はいつの間にか丸くなる
なにか大事なものを描きたくなっても
尖っていない青鉛筆では
何も描く気がしない
そうしてまた
僕は必死に削り始めるんだ
そうしてまた
季節はぐるりと一周して
僕の青鉛筆は
何も描いてもらえないまま
その命を終えて行くんだ






自由詩 「削る」 Copyright ルナク 2008-07-28 10:21:33
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