潮時
鎖骨



君は眠るのだろう
鳥の泣きながら帰ってゆく夕暮れに。
山に抱かれて人に抱かれて
遠く、重く、長く、射す陽に染められて。
閉じられた目はしかし覚めていて
幼かった日々の空の高さ、貴さ
世界の柔らかさを見つめ返している、


いつか手足をなくして、
忙しく思い巡らせるだけになった頭と、心もとない
小さな背と尾のひれ一つずつで
社会の海を泳ぐ歳になったふたつの肉。
限られた時間のなかで
選んだものを食べて生きて
老いた暁に君はすべて還る、
とてもよいところへ。
供にひとつに、在るために成るために。









自由詩 潮時 Copyright 鎖骨 2008-07-23 02:16:28縦
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