環情線
Rin K

すこしだけ怖いことを考えたくて
夢の中で君を消した
白い朝がやってきた
さよならが乾きたてのころ



机の上に散乱する単語帳
角が折れてめくれてゆく
覚えることと忘れないことの間で
ひとつづき震えた夏



君を描こうとすると
いつも同じような色ばかり並べてしまう
それくらい君の
背景は海だった



嘘みたいに晴れて
壊れたように笑って、それから
どうして私たちは死ぬのだろうって
秒針を止めて呟いた君が




水平線をなぞった指先の青で
君に会いに行く
それだけでよかった
七月はただ熱く



眩しさで砕け散った世界は
確かめようのない手探り
海岸のさいはては
尋ねない八月



砂にまみれて
日々を転がって
直線はいつしか
轍になって



花びらを剥ぐように裸になる
そしてまた、ことばで水をやる
それが造花だって
本当は知っていても



本棚から地球儀を出して
撫でる、けれど
どこにもいない 僕は
誰を愛していた



すこしだけ怖いことを考えたくて
夢の中で君を消した
白い朝がやってきた
さよならが乾きたてのころ



乗り遅れた夏は
僕を連れて行かない
君の背景の
海にだけはもう





自由詩 環情線 Copyright Rin K 2008-07-20 01:35:49
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