葉音
木立 悟





枝のはざまの朝と目が合う
銀に左をひとつ取られる
戻されてから夜を見ると
少し緑が描き足されている


気づかないことに気づくとき
水へ水へ遠去かる空
窓に到く世界の切れはし
つまみつままれ ふるえはばたく


岩を燃す火が
ひとつの曇を照らしている
空の奥をすぎる空
道へ道へ照り返す音


緑と灰の日
午後のままの夜
水と水の道
雨に落ちる雨


飛沫の壁が次々倒れ
地に触れる前に消えてゆく
道が道を忘れる場所に
壁は夜を映して立ち並ぶ


つむる目の水
降りつづく声
同じ 異なり くりかえし
ひとつふちどり ひとつ沈む


窓と夜のはざま
夜の色の硝子がひしめき
片目のなかで鏡になる
緑にひらき 朝になる


ずっとささやき ひとえ ふたえに
わたされる色 返す色
世界 火のうた ひとつのふるえ
生まれたばかりの ひとつの波紋



















自由詩 葉音 Copyright 木立 悟 2008-07-19 11:45:36
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