夏の落とし子
銀猫



湿った夜に
孤独の匂う扉が開いたらしい
今日の陽射しに晒した、
二の腕も敵わない強さで
戻る道を塞がれた

草むらに埋もれる羽虫や
苦瓜の、
生き物のような苛立った肌

何かしらの暗を宿すかたち
負のベクトルに誘う、
語り尽くされた熱は
眠れぬ小鳥の叫びを呑み込み
背中を走る焦燥感だけを
取り残してゆく


現れた扉は青錆が浮き
繰り返してきた溜息の
あてどなさに添うように
闇を綻ばせては
小さな罠を仕掛ける

その鍵を回せば
そこらじゅうを漂う水分が
体内に流れ込み
汗よりむしろ涙となって飽和する


曖昧なかたちをしたわたし
潔く人の姿に戻るため
苦い夏を飲み干そうと思う

舌先を刺す痺れが
そのとき生を語るのだろう





自由詩 夏の落とし子 Copyright 銀猫 2008-07-18 23:21:34
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