冬の港で生まれた
たりぽん(大理 奔)


行き先も知らない船から
紙テープを投げて
わたしは今日、生まれよう
別れを告げるために投げるのではなく
離れるために切れるのでもない
風に大きなループを描き
旅立つために

   出発や到着は旅ではない
   目指していくこと
   そしてさまよい続けること

母よ、私の紙テープを離さずに
切れるまでたどり続けてくれた母よ
防波堤のような両の手をすり抜けて
わたしは今日、生まれる
港が遠くなるほど
行き先は近くなって

五羽の海鳥よ
防波堤の途切れる先まで船を追い
生まれるわたしの家族になれ
泡立つ冬波よ
防波堤の先で胸を揺さぶり
旅立つわたしの兄弟となれ

ひとは誰もがそれを切って旅立つ
行き先も知らない船から
紙テープを投げて
今日、生まれる





自由詩 冬の港で生まれた Copyright たりぽん(大理 奔) 2008-07-18 21:08:11
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