iなひと
恋月 ぴの

* 1

愛無しには生きられない
わたしは本気でそう思っていた


* 2

あの水着もそうなんだけど
これもなんだよね

目新しさは常に外側からやってくる
そんな時代になったことを
思い知らされた日に

指先で踊るパズルはふたりの思い出

懐かしさに立ち止まろうとしても
許されることでは無く
雨戸を閉ざした母屋の軒先で
ビードロの風鈴

ちりりりんと風に揺れた


* 3

目に見えるものだけを信じる
そうすれば
ひとは愛無しでも生きていけるのだから

あなたはそんな言葉を残して
ひと夏の記憶となり

わたしの心は人肌の優しさを忘れ得ずに
ざくろの花は
愛するひとの想いに染まり
秋になると熟れた果肉を庭先に曝す


* 4

だとするならば
心を通わすことへの戸惑いは
ひとを愛した証しだと
ビードロの風鈴

ちりりりんと風に揺れた





自由詩 iなひと Copyright 恋月 ぴの 2008-07-17 23:45:55縦
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