タイダイのおじさん
たちばなまこと

熱い帯にタイダイの笑い声が響く
電気工事のおじさん
駐輪場のおじさん
建設現場のおじさん
交通整備のおじさん
ペンキ塗りのおじさん
たくさんのおじさん
設備工事の父さんも
あんな風にタイダイに 笑っているのかな
今頃北はさらさらの夏の風に 揺れている頃だろう

坊や こんにちは
おじさんにも君ぐらいの孫がいてね
遠くの街で暮らしているんだ
今頃は歩きも達者になっただろうな
最後に顔を見たのは冬だったかな

冷房の無い現場で首にタオルを巻いて
アスファルトの照り返しに顔をしかめる
開け放ったワンボックスの後ろで
愛妻弁当を食べて
AMラジオをバックに昼寝をする
けだるい夏の午後

坊や
親孝行するんだぞ
坊やのかあさんは
強いけれど弱いんだ
女ってのはな
強くて弱いんだ
男ってのは弱くて強いけれど
すぐに泣いちゃあいけないよ
これから辛いこともたくさん待っているだろうけれど
その笑顔を忘れず
強く生きるんだ

顔をしわくちゃにして日焼けした手を振る
太陽をまっすぐに受け止める厚い胸
街角にいつもほかほかに発熱している
タイダイのおじさんが好きだ



自由詩 タイダイのおじさん Copyright たちばなまこと 2008-07-12 13:03:59
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