なつかしい猫
石瀬琳々

なつかしい猫
いつか啼いていた気がする
私だけの思いが影を引いて
路地を今曲がってゆく


そんなに淋しい瞳で
私を見つめないで
やさしく撫でてあげたくなる


さしのべた指先をすり抜ける風
振り返ればもう影はない
道端の花がかすかに揺れて


なつかしい猫
いつかどこかで
そっと呼ばれた気がする
ずっと呼んでいた気がする



自由詩 なつかしい猫 Copyright 石瀬琳々 2008-07-02 13:56:54
notebook Home 戻る