birthday
風見鶏

枯葉

風に抜け落ちたその羽を一枚一枚引き裂いて
枯葉で紡いだその色は一体どんな景色を描くのだろう

知りたいような知ってはいけないような
たまにはそんな背徳的な感慨にふけるのも悪くは無い
そこにはきっと何か建設的な意味などなくて
他に喩えようの無い価値が転がっているだろうから






恍惚の森の道化師は枯木のようなその腕に
あの娘の頭蓋を抱いていた

砂漠の泉の畔には烏が群れを成していて
乾いた声でカラカラと嬉しそうに呟いた

窓の外には紅の景色がとても鮮やかで
無意味に重ねた吐息だけ硝煙のように揺れていた

それなら僕は群青に染まる夕日を閉じ込めて
夜に輝くあの星をあの娘の骸に捧げよう










あの日ぼくらは堤防で枯れてく月を眺めていた
泉の先には透き通る風がいつでも吹いていて
雨に汚れて乾いた髪を血溜まりの中で潤した

砂漠のピエロの歌声は空の小鳥のそれに似て
降りしきる雨は日溜まりに小さな花を咲かせて消えた










アルスターのテールライト窓の向こうに霞んでいく
陽だまりに眠る黒猫は甘い匂いに誘われて
ロックスターのしゃがれた声をいつも飽きずに聞いていた
今でもそれに変わりはなくて
色褪せてしまった写真の中でそれを何度も繰り返す

赤いレコード

黒いスーツ

常夏の夜

紅の豚










birthday

言葉が生まれる瞬間がきっと僕には愛しくて
言葉を繋ぐその時は何度も味わっていたいような
何時までも味わっていたいような高揚に晒される

一度描いたその色を再び塗りつぶしていくのは
きっと油絵を描くような感覚に似ているんだと思う

止められるはずもない
僕にとってそれはきっと新たな誕生の瞬間だから


自由詩 birthday Copyright 風見鶏 2008-06-28 05:42:32
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