中野アンダーグラウンド
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ビル前の長い階段を下りていると
劇団員の声出しが目に映った
軍服のようなものを着た団長は
大きな声で団員を叱っていた
スキンヘッドの若い男の子は
特に何度も注意を受けていた
他よりも努力しているように見えたが
サングラスのセンスから見れば主役にはなれないだろう
それにしても東京で生きるというのは
そんなに厳しいものなのだろうか
巨大スクリーン前のスクランブル交差点
行き交う人の群れはみな駆け足
そもそも私が中野に来たのは
路地裏に隠れたアートを探すためで
若手が描き上げた作品とはいえ
中には目を見張るようなものもある
公園のような広場に人だかりが出来ていたので
覗いてみるとワンピースの女性が弾き語りをしていた
声は島谷ひとみに似ていて
私は上手いとは感じなかったが
聴衆は何人も涙を浮かべていた
それにしても東京で生きるというのは
そんなに悲しいものなのだろうか
誰しも胸に傷跡を秘めて
それを撫でてくれる人を探している
家に着いたのは夜十時過ぎで
夕飯を買いにそのままスーパーへ出掛けた
3割引の惣菜を温めようと
電子レンジに並んでいると
前にいた四十歳くらいの女性が
店内の休憩スペースで弁当を食べはじめた
何故家で食べないのだろうか
家に帰っても誰もいないのか
家で一緒に食べたくないのか
余計な詮索が頭を過る
それにしても東京で生きるというのは
そんなに淋しいものなのだろうか
人は溢れるほどいるのに
繋がりあう術を知らない
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世にも奇妙な夢物語