夕立を巡る想い
千月 話子

雨垂れが髪を伝う 芝刈り機の音は止んでしまった
体に吸い付く服  空に高く抜ける声・声・声・止んでしまった

時はすでに遅く 軒下で震える鼓動は早まり
足止めの靴先で よれる砂利の音と重なる

目の前の水幕で ぼやける視界には 世界は無く
雨樋を行き交う轟音だけが 今は全てで

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 人類がいなくなってしまった
 鳥がいなくなってしまった

土下の蟻は今頃 地球の奥深く逃げてしまったのだろうか?

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雷鳴はすでに遠くへ行きつつある 不安は少し止んでしまった
世界はまた動き出そうとしている 迷いはつま先から止んでしまった

 空は 乾いた雲を連れて
 人を 連れて

やがて 蟻達も戻ってくるだろう 
 巣穴を広げ!急げ! 繋げ!

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約束は 10分過ぎてしまった
待ち人は まだ来ない
その人も今 時間差の雨・雨・雨・で
夕立に濡れて 途方に暮れて
世界の果てで 想い巡らす

・・・・・私達は 伝える術を すっかり忘れてしまっていた
 
 


自由詩 夕立を巡る想い Copyright 千月 話子 2004-07-14 23:27:17
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