花火
もも うさぎ

長いこと 時間はたった


ずいぶんと 睫毛も 声も 痩せてしまったね、と笑う

それすらも

全部両手で抱えて持ってゆきたい 日常の風景のひとつだった



おぼつかない足取りで
浴衣を着て

後ろからその帯を結ぶわたしの指には

確実にあった時間という しわやしみがたくさんあって



いとおしい日々よ




その昔、書いた詩は

死、というものを真っ向から見据えようとして


それがどんなに哀しいものなのか
いかに虚無なものなのか

目を逸らさずに、美談にせずに

そうやって必死に見ていた


それは、若さゆえの、死の見方だった




今でも悔やむのは


どうして、もっと優しい 優しく愛しい言葉で 死を綴れなかったのか




どうして、 あたたかいそのときを迎えられるような詩を書けなかったのか



美談で 結構じゃないか


優しい気持ちが すべてを包むのに




なお









手を伸ばして触れることで すべて伝わるのだから

毎日 手をつなぎながら

どちらかが倒れても 手を離さず あの頃の歌を歌い続けながら




力の抜けたその肩を抱いて


今夜の花火だけは 最後まで 一緒に 見ようじゃないか

















〜花火〜


自由詩 花火 Copyright もも うさぎ 2008-06-17 10:06:57
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