こいびと
縞田みやぎ

 

あたし象がなくのをきいたことがあるわ

ミルクが冷めるので
君は急いで言うのだった

カーテン 君の室内とその壁

日が射しても 虫がいない日が多いので
もうテーブルクロスは必要ないと思う
ましてやこんなにあちこち
染みのついたやつは

あちこち 昨日までは花柄

ずうっとが春よ
ずうっとが晴れているのよ
ちいちゃくうるさいものなんかいないわ
それはとても神聖なものだと思うわ
場所が場所ならあたしは神様だあ
ほんと よ

しかし君の袖は遠くの土地へは行かれない
裾も下着の線も床につけたままにして
秒針の音を聞いている
ミルク ミルク ミルク と紅茶

染みか

次に生まれるときには
襟口にずうっとレースをつけたいわ
レモンの匂いのするきれいな女の人になって
水のある風景を見て過ごすのよ

手首を通って 乳色が広がっていく

それは春だったかい
それは晴れた日だったかい と聞くと
君はちょっとぽつんとして

くもりだったわ
くもりだったわ
象のおなかが いいい とふるえて
雲の底をなぜて ながれていったわ
あたし晴れていたらよかった
あたし晴れていたらよかった

カップの縁を黄色くなぞって
君の室内が暮れていく
カーテンを床まで垂らしておきたいと
手のひらで口を覆う

遠くへは行かれない 裾と 君のどこもかしこも
届いては行かれない今日が暮れて 室内

明日の朝にはよい匂いのお茶を買いに行こう
そう テーブルクロスも新調して
スカイブルー
スカイブルーここから
窓の外まで垂らして 朝には
ここから

そうして 君はまたちょっとぽつんとして

それじゃあまるきりさかさまなのよ
もう冷めて しまったわ


指先をしきりに隠してみせるのだ


 


自由詩 こいびと Copyright 縞田みやぎ 2008-06-17 00:50:53縦
notebook Home 戻る  過去 未来