水門を臨む
縞田みやぎ

 


基幹農道の左右は区切られた水面
あの小高いのは 川のへり
足の悪い男が傾斜へとうつむいている

   なずなは もう しまい
   つめくさは もう せんから さかり

水位を測る古い白塗りの捧はまるで
男の目をも 片したようじゃないか

   たんぽぽの わたげ
   なのはなの たねの つづら


アスファルトを割る草の名は知らないが長く生きることはなく
来年も 来年も 押し割り続ける柔らかな茎だ
来年も 来年も
        おらほの田畑なぞ くれてやってもいいのだ
来年も
        おらほの田畑なぞ 食いぶちの有様だ
来年も
        おらほの 苗は 種は 種は


   もくれんの くちた てのひら
   あてどなく つめをかく からすのえんどう


あぜ道の果ては水路へとぶつかり
そこでしまいになり 暗渠の口を覗きこんだ
男のつま先が 草の葉をちぎり
何度も 水の速さを測った


水門を臨む


 


自由詩 水門を臨む Copyright 縞田みやぎ 2008-06-14 00:29:16縦
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