BRIDGE
1486 106

汚水の流れる川の上
工業団地と市街地を繋ぐ橋
毎日多くの通行人が行き交う
弁当箱を抱えた土木作業員
金色ネクタイの青年実業家
貧しい身なりの痩せた老人
手にした紙には“SPARE CHANGE”
様々な人が橋の上で生きている
ある日欄干の穴の中から
小さな声が聞こえてきた
若い女性の声だろうか
小さすぎてはっきりとは分からない
“G*V* M* S***TH*NG *O E*T”
“G**E M* S*M*TH*** *O DR*N*”
わずかな力を振り絞った
その言葉に誰も気付かない
“G*V* M* *AND”
“G**E M* ***P”
中には気付いていた人もいた
だけど誰も耳を傾けようとはしなかった
“**LP M*”
“H*LP…”
日増しに彼女の言葉は短く
声は小さくなっていった
それでも通行人は何もしなかった
忙しさに周りが見えなくなっていた
痺れを切らしたのか髭面の男が
パンの耳を乱暴に投げ入れた
乾いた音が穴の中に響いた
それ以来声は聞こえなくなった
穴の中にいた彼女の行方を
知ろうとする人は誰一人いなかった


自由詩 BRIDGE Copyright 1486 106 2008-06-10 18:44:47
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