クマのぬいぐるみ
わら

あなたの誕生日はいつだったっけなぁ
と思いながら

刻々とすぎてゆく日々


選ぶべき言葉も選べないまま
大切なもの
いっさいが流れてゆくというのなら

それは、きっと
わたしがたどった
いくつかのあわれな日々


欲望にもさいなまれ
陽がどちらに出ているのかもわからず
右往左往

平凡な、平凡な
しょーもない男です



あなたを傷つけぬことを
せめてもの、まごころというのなら
それがわたしの告白です


想いをはなつということは
とても生命力のいることで

わたしは何も言えず
こんなところに流れついた人間ですから

言葉ひとつ、カタチにすることも
それはそれは身をけずるようで

ええ、
わかっているのです
その尊さ


胸をうつ
その言葉

大切なもの
大切な人

闇に息づく、小さな灯りが
なにかの声をきかせてくれます



その夜は
すこし、つかれていたのかなぁ
ふらふらと家路につき
たたずんでいました


ふと、
もらったのは
小さな小さな贈りもの
手作りのクマのぬいぐるみ

「すこし雑だけど
 その日までに、どうしても仕上げたくて」と


たしかに耳もゆがんでいて
瞳もどこか、うつろなんだけど


なんでだろう

それがすごくカワイらしくて
飾り気もなく
なにも言わず
ただ、こっちをみている


ぼんやりと
ながめていて

気がつくと
なみだがにじんでいました


救いの手がさしのべられていること

素直に伝えなきゃならないことは
「ありがとう」で


なのに、ねぇ


でも、気づいているんだよ

ちゃんと伝えることもできないこと


ぬいぐるみ
ちゃんと抱きしめられないこと

だって、それは
幻想のガラス細工なのだもの



きっと、あなたには
そばに、もっと、いい人がいるはずだから


だって、
ちゃんと抱きしめられないのだもの




ありがとう

それだけで十分です


あなたは
真に美しい人です




















自由詩 クマのぬいぐるみ Copyright わら 2008-05-22 06:12:11
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