できごと
小原あき

街なかで白い小鳥を配っていた
籠に入ったたくさんの小鳥を
小鳥配りの人が要領良く配っていく
受け取らないつもりでいたのに
いざ目の前に出されると受け取ってしまう
わたしが手に取ると
それは隙をついて空へと飛んでいった


ペットショップのウインドーに
赤ちゃんが売られていた
子供が出来にくいわたしは
その中の一番可愛い子を見つけ
その子をくださいと店員に申し出た
あいにくその子は売約済みで
よく似た両親に引き取られていった


諦めきれずにウインドーを眺めていると
店員がこの子はどうですか、と
あまりわたしたちに似ていない子を連れてきた
抱いてみると良い匂いがした
妊娠したばかりの友人と同じ匂いだった
やっぱりいいです、と店員に返した
よその子を抱いた後みたいに
ひどく疲れてしまった


休日にとりあえず、
デパートに来てみたけれど
欲しい物なんてはじめから無いのに気がついて
夫と暇つぶしにゲームセンターへ寄った


ゲームセンターのクレーンゲームに
ウサギが何匹か寄り添って怯えていた
百円を入れて動かしてみると
より一層ウサギたちは身を寄せて
端っこに行ってしまった
クレーンが届かないから
諦めて鼻をかんだ


鼻をかんだティッシュは
小鳥の羽根の匂いがした


帰宅する車の中で
ウサギの行く末を考えてみた
だけど、何も浮かばなかった
夕陽とウサギの目は違う色をしていた
だから尚更わからなくなった


家の玄関に小鳥が死んでいた
夫はそれを見て
何でもないような顔でゴミ箱へ捨てた
ゴミ箱に捨てられた小鳥は
なんだかティッシュみたいだった
だけど、わたしには解らなかった
なんだか悔しくて
最後に泣いてしまった







自由詩 できごと Copyright 小原あき 2008-05-17 20:24:24縦
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