清月の薔薇
千月 話子


蓋を開けたオルゴヲルの回転軸につかまって
羽の付いたお人形の足が
ルラルラ踊る


君に会いたくて
君に 会いたくてね
手を離して
一緒に飛んでしまいたい


箱の内側には白薔薇を
何度も詰め替えて
行ってしまった君を
再生する


青白く光る月の青という言葉を
誰も使わない日があればいい
明日の空には
清純に輝く白い月がある


神々しいほどの漆黒に
揺れ動いて 揺れ動いて
やがて凄艶の月になる
満ち欠けは花びら


約束したよね 私達の
手の平から白い花の香り
擦り合わせて匂いをつけた


体中から溢れ出す
君を探して
私を見つけて
夜花になる
私達の純潔


朝日が眩しくて
夕日が悲しいと
共に覆い隠した
接合部の無い日の出来事


階段の一番下の段差の高さを
飛び降りられない私達の真上で
純白が崩れ始めて白薔薇のような月


下方には光る棘を尖らせて
痛みの無い痛みを知ってしまっても
今は 手を離さないでいて


私達の身体をぎゅうと触れ合わせて
私達の凹凸を堅く結ばせて
薔薇の月が閉じるまで
薔薇の月が落ちるまで




自由詩 清月の薔薇 Copyright 千月 話子 2008-05-16 23:15:47
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