水の空席
若原光彦

 カメラに向かい
 天気図を背にして
「午後から雨になります」
 と伝え
 小さく頭を下げ
 辞表を提出し
 その日の午後
 先生は雨になった
 
 それは小さな雨だったが
 傘を持たなかった者を
 したたかに罰した
 (私も 彼も)
 
 それは小さな雨だったが
 だからこそ跡に
 くっきりと虹を残した


自由詩 水の空席 Copyright 若原光彦 2008-05-15 20:32:05縦
notebook Home 戻る