水の空席
あおば

                 080513





水色の空に雲が流れ
時間が止まっているようにも見える
体育館では
子供たちが遊んでいる
にぎやかな声に
忘れかけた記憶を辿ると
視線の先には
古ぼけたジャングルジム
卒業時にはピカピカ輝いて
銀色に光っていたが
青い空に溶けていた

水色の流れの中に
掴み損ねた銀ヤンマ
高く高くに飛翔する

銀色の流れの中に
立ち止まる悠久の
平和

歩道橋の上では
鳩が豆鉄砲を食らって
目を白黒して
羽根をばたつかせ
空に向かって
逃げてゆく

水筒を傾けて
ゆっくりと噛みながら
水を飲む
ごくんごくんと擬音を付けて
腹の虫を整列させる

教室には
行人偏を忘れたと
取りに帰る子が居り
一つだけ空席がある


悠久の平和を願う
すべての人が
戦うことなく
幸せに過ごせますようにと
若い人たちが考えて
憲法の柱にしたのです
しかし
有給の平和と聞き違え
遊休の平和な毎日を願い
朝から晩まで遊んでいる
メタボ予備軍となり
いつのひにか
生死を掛けた戦いに臨む
その勇気があれば
なにも言うことはありませんと
回転寿司の中トロと穴子
最後は卵焼きでお開きとする



自由詩 水の空席 Copyright あおば 2008-05-13 02:41:01
notebook Home 戻る