田代深子


おれだけならばあの塔までも行く
がおまえが
いて

ああ見てみろ青あおく明けそめの空
がひとすじの月
に切れる

うなだれた影たちが行く
塔へ
(動くな)
影をおさえ
て低くいぶきおまえがうなる

アルミを噛む響き
そんな
部分でおれたちは共振するばかり

それは青の明かし空に切りたつ月へと電気を通し

あの塔の頂頭から根方まで
撃ち崩す

ふやけたおれのゆびにおまえの指はまぶたの
うちからひき剥がした金のレンズ
を嵌めた

それきり響きは失せ
蹲るおまえのかたわらでレンズ
を空にかざし

見ろよ
ああ見てみろ空は明けやらずひとすじ
の傷にたえ

塔はおのずと沈む
ごとくゆらいでその響きもかすか
に遠のく




自由詩Copyright 田代深子 2004-07-09 06:42:10
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