マテリアル
石川和広

山のあなたの空遠く
はっきりはっきり目が覚める
布団を押し上げて
燃えてしまっている
あなたが幸いではなく
きがかりだ
何の関係もなくきがかりだ
そう
そういうこと
きがかりだ
みることは
みえないのだから
みようとするのだが
みえないのだから
きいているのよー
きこえていないから
きいたことにしてしまうけれど
あなたの秘密を
きいたことにしてしまうけれど

それでははじまらない
にせものなんだから
余の思いはにせもんなんだから
にせもんをあなたになすりつけて
素敵な風景をきどっている

じょうろ

あなたが花だと思ってみて
水をやる
葉と葉のあいだに
つぼみをつけた茎が伸びている
まだ咲いていない

山のあなたの

咲いていない

贈り物です ピンポーン
空の配達です
知らない人々のおもいでのつらなり
金の模様である
雲がいずる場所
その地点にはおどろくほど

おどろくほど
おちていこうとする水の
つぶつぶがフリーズしている

山のあなたの

固まっている
それは器
器でない
攻撃できない
何もないようだ
水があるというのに
それは一瞬で
凝固したアトムさんの集合
よりあつまって激しく静かに
聖している
精している

そうだおちかかっていこう
おちかかる
棚から牡丹餅

2階から目薬

仕方ないのだから
こうでもしないと
山のあなたの
あえないのだから
強い風は山にぶちあたり
激しく渦を巻き

山のあなたの幸いの町を
こなごなにしてあなたを取り出すまで
余はふりつづけよう
ふりつづけよう


※カール・ブッセ 上田敏訳 「山のあなた」より


自由詩 マテリアル Copyright 石川和広 2008-05-03 23:27:59縦
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