逆さ女
虹村 凌

何通目かのメールで
その女は自分の写真をメールに添付して送ってきた
「逆さにすると、少しは綺麗に見えるから」
と言う理由で
その写真は上下逆さに写されていた
僕は携帯を逆さにしてずっと眺めていた

ことある毎に僕に色々な相談をするその女は
少し変わった格好をする女だった

初めてその女と会った日
その女は
「逆さだと、少しは綺麗に見えるから」
と言う理由で
長いズボンをはいて逆立ちをして歩いていた
僕は逆立ちをしたものか迷ったけれど
どうせなので並んで逆立ちをして歩いた

ことある毎に僕には答えの出せない相談をするその女は
少し変わった動き方をする女だった

何回目かにその女と会った日
僕は
「逆立ちをしていたら、手をつなげないよ」
と言った
その女は少し困ったような怒ったような顔をしていた
「何か言えよ。舌入れてキスすんぞ?」
その瞬間にその女は
「あなたにそんな事はさせない」
と怒り狂って帰ってしまった

ことある毎に僕にはどうしようも出来ない相談をするその女は
少し変わった喋り方をする女だった

久しぶりにその女に会った日
その女は
「逆さだったら、少し綺麗に見えるから」
と言う理由で、頭を上下逆さにして歩いてきた
「これなら手もつなげるでしょ?」
そういって金色のマールボロを吸って笑った
僕がそろそろと手を伸ばすと
女は少しだけ優しく手を握って微笑んだ

ことある毎に僕に色々な報告をするその女は
少し変わった女だった

しばらく手を握っていたある時
その女は
「何でいつまでもあなたの手を握ってなきゃならないの?」
と言うと手を離してスカートのすそで手を拭いた
僕は少しだけ笑って
ぬるくなったウーロン茶で一気に流し込んだ

その女の膝に上で安心して見せる男を
僕はあまりよく知らない


自由詩 逆さ女 Copyright 虹村 凌 2008-04-29 21:39:39
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