真空の
鎖骨








   一面に広く冷たい月の砂丘を
   春先の空に見つけること
   教えてあげたこと
   知ってほしくなかったこと
   手紙を一枚だけ書いて
   そして出さなかったこと
だからどこかから届くものもなかった















   
   束ね上げた言葉は遥か重い星の引力のために
   あるいはそこここに溢れる斥力のために屈折しながら
   永く真空を旅する
   描き上げた遠い風の絵は
   数世紀の後探査機が投げる光が
   返した影と瓜二つ
真空を駆けたかった
あの中をこそ往くべきだった
誰にも惑わされずに
敵意も悪意も好意も欲も記号化して
突き進むものでありたかった
電子の馬鹿正直で
言葉も
意識さえ
要らない時間を








   






   光源はいつでもどこにでも在る
   たくさんの影もまた同じように
   貫かれ飲み込んで
   果てる場所を探しているのかもしれない
   限られることのない唯一の
   掴まえられぬもの
   あらわせぬもの
   憚られるもの
   全きちから
   終わりを
   内包して
   どこまで










   





自由詩 真空の Copyright 鎖骨 2008-04-22 01:46:13縦
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