石畳の光
灯兎

石畳に膝を折る ぼろ切れを纏った少女

肌は白く 心臓が透けてしまいそうなほどで
髪は黒く 何か重大な光を隠しているようで
瞳は大きく ステンドグラスを見ているようで
手足は細く 成熟した草花の香りが漂っていて

彼女は左右の指を絡めあって じっと何かを見つめていた
それは 祈りを捧げる姿にも似ている

馬鹿げている

思うけれども 一度浮かんでしまったイメージを
振り払うことなどできやせずに 
ショートピースに火をつけて 輪郭を焼いていく

もし本当に 何かを祈っているのだとしたら

そんなはずはないと分かってはいても
思い出の吹き溜まりに 触れられたような
くすぐったい感覚は消えてくれない

指先が熱を持ち始めて もみ消した煙草
こんな瑣末なことも きっと彼女を苦しめるのだろう
そう きっと 何もかもが

立ち上がった彼女は 小鳥みたいに両腕を広げた
それは 聖者を張り付けた十字架にも似ている

ああ もう 認めざるをえないんだ
ずっと 彼女を求めていたんだって
ずっと 彼女になりたかったんだって

言葉をうまく包みこめないでいるうちに
彼女はこちらに振り向いて さらりと笑った


自由詩 石畳の光 Copyright 灯兎 2008-04-19 22:36:28
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