草の花
杠いうれ

くちなし色の便箋に書けば 口にせずとも想いがつたわる
そんな 企みたくなるいいつたえ
でもくちなしの花がどんなだったか
ずっと長いこと思い出せずにいる


いつかおまえに すきな花を問うたとき
百合、と迷わず答えたから
しろい袖 朱色のチークに汚されようとも
おしべは拭わないでおく


きらいなひとの名前だった つぐみ紫木蓮シモクレンついばんで
きらいなひとの名前だったから 
どうせらいねんも咲くじゃない なんて撥ねられそうで
どうせらいねんも咲くのだけれど


「ならば櫻の木はさしづめ、おんなのこというところだわね」
君は案の定 首かしげるけど
変だよ花のあとから葉が出るなんて と
君が云ったからでしょう



倉主なくした書斎から盗んだ 誕生花の本は
わたしのが 草の花 だとおしえてくれた
くさのはな って、なんのはな?
おじいちゃんに訊いてみたいのに




自由詩 草の花 Copyright 杠いうれ 2008-04-17 18:01:34
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