駅員と春
s
ホームを歩いていたら
ほうきとちりとりを持った駅員さんが
花びらを掃いていた
小さなホーム 裏の桜の木
頭上から桃色の両手を差し伸べて
風が吹けば
ひらひらと舞い降りてくる
小さな蝶の群れ
地に着けば
川のように流れてゆく
それらを集めては
桃色の山にして
ちりとりの中へ
淡々と流してゆく
彼は背を伸ばした
今日もいい一日になるのだろう
見上げた顔に朝日が差した
すべてを綺麗に収めて
彼は少し満足げな表情をした
そして最後に
小さな吸殻を
ちょちょいと
ちりとりに入れて
電車はもうすぐ出発する