沈殿
縞田みやぎ

金魚の水 を
かえないまま
入浴しているのです
もう ひとつきも

散ってゆく水面が
茶色く さがるのです

あるでしょう あの
あぶくが
あれを金魚は のみこむ
わけですけれど

ぶぎぶぎぶぎ と
あぶくがねばり
茶色い水面の むこう
赤いひれ
黒いひれ
ひれ
いきておらるるの です
それでも

そうでしょう
なにも わたしの金魚
です から

入浴していると
電話がなるような
気が したのです
知っているのだぞ
知っているのだ ぞ
知って

わたしのあぶくは
ぶぎぶぎしないふわ
ふわ
風呂あがりには
にがくて
黒いひれ
赤いひれ
のみこめや しないの
です

いっそ餌のなしで
期待の ひれ
うっとりと
ぶぎぶぎの水面を目指す
下向きの金魚を

あぶく ぶぎぶぎと
のみこむ 金魚は
金魚


電話のベルが
ならないでいるのに
ふわ の あぶく
あらうだけで のみこめや

そうで しょう

呼ばれるような
気がしたの です
知っているのだぞ
知って

のみこめ や
しない
赤いひれ
黒いひれ

許すも なにも
わたしの 金魚 です
から

もうひとつきも
待って
入浴 しているのです


自由詩 沈殿 Copyright 縞田みやぎ 2008-04-10 21:37:18
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