桜ときみと、ひとさしゆび
銀猫

ふわ、り
風に追われた桜
川面にちいさな州を作り
その薄紅のしたを
きみの遠い息遣いが流れる

いつか
それはシロツメクサの匂い立つなかで
流れていたのと、きっと同じ
けれど今日は
不思議な一線が引かれている

春はいつも
きみのかたちをしていた


  さびしい、と口にしながら
  枝に残る桜のひとつを
  ひとさしゆび、となかゆびで挟んで
  このまま少しだけ
  ちからを入れたなら
  きっとそれは真実に、
  思い出に変わるだろう


わたしのこころは
流れの遥かを越えた向こうに
忘れてきたらしい

ためらい、
ちぎる、
さくら、
指先が
四月






自由詩 桜ときみと、ひとさしゆび Copyright 銀猫 2008-04-09 22:29:14縦
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