創書日和【鳥】 記憶の鳥
大村 浩一
飛び立つ後ろ姿を
どこかで見た
朝
の記述を
探して
黒く浮かぶ
記憶の島を探し
脳内を辿ってゆく
鳥
ほの明るい
Cellの海の
上空に浮かび
進んでいく
ふたつの形を
はばたくように
反復しながら
行方に
島が現れると
鳥はその周りを巡る
すると島も蠢いて
反応する
不意に鳥が降下し
島に飛び込む
黒い樹々の枝
と見えていたものが
ざわめき
みるみる
膨れあがり
覚えていたものに
形を変えていく
遺跡
鰐
女
海草
鯨
いいえ
巨大な鳥
何度か激しくはばたく
と
一瞬で粉々に千切れ
幾つかの
新しい小さな鳥になり
八方へ散っていく
(これだった
(あるいは
(これではない
島は
これから別の鳥を生きる
別のどこかの
島に出会うまで
何度も
くり返す
ほの明るい
Cellの海に浮かぶ
見たことのある
島
見たことのない
朝
の記述を
探して
2008/3/27
大村 浩一
この文書は以下の文書グループに登録されています。
創書日和、過去。■ 現代詩フォーラム詩集 2008 ■