T字路
佐々木妖精

人んちの猫を
眺めるのはいいな

溜息で吹き飛ぶ薄給だというのに
ある日袋がずっしり重くて
慌ただしくぶちまけて
猫がキョトンと転がったら
がっかりしてもいいな

孤独という状態を
さみしいと
説明することができないので
モサカワコーデの愛され猫
エアギターよろしく
やつの腹 心ゆくまで
日陰なき裸体かき鳴らしても
見通しの立っていた死を



赤ちゃんとだけ友達になりたい
赤ちゃんとだけ遊びたい
赤ちゃんを抱きしめたい
赤ちゃんとだけ話をしたい
赤ちゃんとだけ酒を酌み交わしたい

遊ばれてもいいから
赤ちゃんと付き合いたい
人の赤ちゃんとは禁欲的に
猫の赤ちゃんとはプラトニックに

腹違いのきみと仲良くなって
みんな忘れ去ればいい

きみは逆算すれば晩年だ
逆三角形動物だ
早い鼓動と高熱は短命な小動物の証
きみは四つん這いで枯れ葉を揺らす
情も理念もない四足動物
きっときみには魂がない
きみにそんな概念はない
きみは人間じゃない
猫のように人間じゃない

俺は
なんだった


自由詩 T字路 Copyright 佐々木妖精 2008-03-27 12:14:31縦
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