手をつないで
小原あき

雲になった少年は
涙を流して
誰に何を
知っていてもらいたいのだろう


詩人になりたかったのは昨日のこと
今は風に流されるだけ
それだけのことに
満たされている
嬉し泣きしかできない自分に
ただ立ち止まっていることの意味を
気ままに流れながら
問い続けている




花になった少女は
いつまでも少年を見つめている
また自分の上に
雨を降らせて欲しくて


人間だった頃と
何も変わらない関係に
焦りを感じながらも
彼の姿を見るたびに
そして
彼を吸収するたびに
大きくなる自分に
色あせながらも
しっかり根を張り続けているのだろうか




土になった少年は
利かない自由に
苛立ちながらも
地球の活力になっているのを
知っているのだろうか


美しい彼女を手に入れたい
だけど、受け入れたり
捧げることしかできない自分
奪うことなどできない自分
それすらも受け入れるしかない
そんな日常に
すっかり慣れたあの日
彼女が種になって
自分に抱かれたことに
祝福の涙を
空にいる彼から
贈られた雨は宝物




木になった鳥は
あまりにも動かないでいたことに
後悔していた
きっと、あのとき
仲間と飛び立っていれば、と


足下の花が
いつも笑いかけている気がした
籠の鳥から逃れた自分は
木になってしまったけれど
花のようなあの笑顔が
恋しくて萎れていると
どこからか活力が湧いてきて
不思議なくらい元気になっていく
それは
自信に満ちた大地の仕業かもしれない





 片思いは叶いましたか?
  ああ
 あの雲はいつもくる雲ですか?
  ああ
 今日は雨を持ってきませんでしたね
  ああ

  あれは僕の
  大切な友人さ











自由詩 手をつないで Copyright 小原あき 2008-03-20 18:40:50縦
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