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山内緋呂子

逮捕される前に
一緒に暮らして
外で
立っても歩いても


電車を降りると
豊島園駅は広い
花りが走りまわる
「くるくるまわるー」って
急行所沢特急所沢普通西所沢
改札を出ると
少年がスケボーでぐるぐるまわる
「これはなんのはな?」
と寄せ植えの黄色い花をこねくりまわす
「首がもげる首がもげる」と花りを連れ去る

急行は停車駅にしかとまらんのやな
この駅にも停まるよって親切に教えてくれてんかと思って
黙って座ってたら池袋に行ってもうた

でもまた急行で停車駅に戻って
各駅停車に乗り換えればええだけや

そしたらここ着いた

近頃の1ルームには冷蔵庫がついてる
刑務所の前にはお花が咲いてるんやろか
ひまわりは大きすぎる
たんぽぽは雑草
菜の花はほんものの気がしない

食用菊はええ香りや

会えんということは
ずっとあんたのことを
よくよく思うということであって
いいのかわるいのか
もう帰られへん

花りがほっぺたに太陽が当たったり当たらなかったりすると言って
台所に登る
おなかすいたやろ、とラーメンをつくってくれて
なるとの赤いうずまきを
私と花りは
近づけたり遠ざけたりしていた



自由詩 ホーム Copyright 山内緋呂子 2004-07-02 07:11:55
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