さんま
夏野雨

もつ煮込み屋で
黒ホッピーと
さんまを食べる

このはらわたをねえ
日本酒で食べたらおいしいんだよね
それだったら、日本酒、たのめばいいじゃないですか
そうだねえ
そうなんだけどねえ

もつ煮込み
砂肝
ハツ
お客さん閉店ですから
もう閉店ですから

ぼくらは日に何度も
まっとうな出会いと
まっとうでない別れをくりかえして
かけねなしの愛情と
死というものについて考え

それはどんな遊びなの
遊びじゃないんです
だってお金だってもうからないんでしょう
勉強なの
勉強じゃないんです
じゃあ何なの
はなうたみたいなもんです
はらわた?
はなうたです

いっそはらわたでもいい
時間を切り売りして
だいこんを買ったり
間違って包丁で指を切ったり
お風呂入ってちょっとやわらかくなったりするはらわた

日本酒によく合うから
もう大人だから

どんな職業についたって
子どもをつくったって
家庭をつくったってよくて
どこに住んだって 誰に会ったって
どんなに遠くまで行ったって
帰ってきたって
帰ってこなくたって

たえられるだろうか こんなに
こんなにも世界が近すぎて

皮膚がうすくて
なかみがすぐに
でてしまうんです

氷のなかを泳ぐあいだは
銀色でいられる けれど









自由詩 さんま Copyright 夏野雨 2008-03-15 19:09:53縦
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